米国史のなかのトランプ政権 ⑥トランプはレーガンを超えた!


⑥トランプはレーガンを超えた!

次にレーガン政権との比較はどうか。

レーガン大統領は、ケネディと同じく、減税を断行した。最高税率は一気に28%まで下げた。これは、単なる税金の話ではない。

国民の富を国に委ね、経済運営する社会主義へ向かうのか、それとも民から無限の可能性を引き出す自由・資本主義社会に回帰するのか。税率には、大統領の思想が如実に表れる。

レーガンの前任者カーター民主党政権による国主導の経済対策が終わりをつげた。一連の民需を刺激する経済政策「レーガノミクス」を通じて、2期8年間で2000万人の雇用増を達成した。歴代政権の最高記録である。

トランプが掲げる雇用創出目標は、「最低2500万人」だ。過去最高のレーガン超えを狙っているのだ。思い付きで「最多雇用大統領」と自称しているのではない。過去の大統領の実績も確認したうえで、数値目標を設定している。

トランプは経済成長率でケネディ、雇用創出でレーガン超えの可能性は十分ある。両政権時代より、アメリカの「隠れ資産」が潤沢だからだ。

まず、グローバル化したアメリカ企業には海外利益が膨大にある。その額は「3兆ドル」に迫るといわれる。その本国送還に対して、大幅減税を導入する。その結果、国内投資に回るばかりか、その税収を元手に‴疲弊した‴インフラ投資に回す目論見だ。

レーガンは「政府は解決をもたらすものではない。むしろ政府こそ問題となっている」(大統領就任演説)といった。トランプはその先をいく。  「政府が人民のために働いていない。政府を国民に取り戻そう」。その象徴として、政府が国民のビジネスを縛り付ける「行き過ぎた規制」をやり玉にあげる。規制緩和では最高「4兆ドル」の経済効果があるとの試算もある。

レーガンには「なく」、トランプに「ある」のは海外利益や過剰規制だけではない。恵まれた人材の宝庫だ。若かくレーガン政権に集結した共和党員が現在、政財界で活躍している。「レーガン革命」と評された政権運営で成功体験をもつベテランたちがトランプ政権を下支えしていく。

加えて、トランプにはもう一つの恵みがある。シェールガスや天然ガス、石炭まで含めれば、エネルギー自給できる状況にある。中東依存を下げるばかりか、ロシアからの天然ガスに頼っているEUへの輸出も可能になる。その優位なポジションを梃に、ロシアと交渉し、外交関係も改善できる。その結果、イスラム国対応に米ロが共闘する関係が築ける。その結果、膨大な戦費を費やしてきた中東介入を大幅に低減できる。すべては、国内の雇用創出に注力するためだ。

政局の面でもトランプは恵まれている。共和党は1932年以来、全米で最大の多数派を構成している。上院と下院で多数派を獲得しているだけではない。

さらには51州の知事のうち、33人が共和党選出である。そればかりか、州議会でも共和党系議員が多数派だ。その数は4177人に及ぶ。

その意味することは計り知れない。トランプの政策が地方のすみずみまで行き届くのだ。

この圧倒的な状況と比較できる政権があるとすれば、共和党リンカーン政権の一期目(1857-1860年)ぐらいだ。

国民対話の面でも、レーガンを凌駕する。「グレイト・コミュニケーター」と呼ばれたレーガンだが、トランプが演説で国民と瞬時にして一体感を築ける能力にはとても及ばない。

不法移民対策でも、同様だ。レーガンが制定した移民改革・管理法は「不法移民と知って雇用するこことを禁じる」消極的な制御法であった。トランプは「国境の壁をつくる」という問題解決に向けきわめて積極的な方策をとる。単純な話、不法移民の就労者が減れば、アメリカ国民の雇用が増える。

レーガンとトランプの最大の違いは、通商政策だ。「私がとても強くレーガンと意見を異にするのが通商政策だ。われわれは通商交渉において、はるかにタフであるべきだった。私は(その実現のために)長年待ってきた。(私以外)誰もうまくやれない」(2016年10月19日、最後の大統領討論会)

トランプの通商分野での思い入れの強さがうかがい知れる。その先にあるのは、中国、メキシコ、日本との貿易赤字の解消だ。そのために、トランプが公約するTPP(環太平洋パートナーシップ)やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉ないしは撤退、そして、新たな貿易交渉がはじまる。