米国史のなかのトランプ政権 ③財界人・軍人が多いトランプ政権はアメリカ本来の姿


③財界人・軍人が多いトランプ政権はアメリカ本来の姿

一方で、トランプが「ビジネス界・軍界の成功者」を多数、政権に主軸に置いたのは異様に思われているが、至極当然の判断といえる。トランプ政権は事実、「歴史上、おそらくもっとも弁護士比率が少ない」(ギングリッチ元下院議長)

「文官・法曹界」中心のオバマ政権、「ビジネス・軍界」中心の政権―――どちらがアメリカ政治の本来の姿かといえば、トランプ政権である。

初代大統領のワシントンは農園主であったし、建国の父の一人で、独立間もないアメリカの外交で活躍したベンジャミン・フランクリンは出版業で身を起こした。

日本でも馴染み深い人物でいえば、日米修好通商条約を締結したハリスは、中卒の貿易商だった。ときのピアース大統領から「東洋通」として認められ、初代駐日代表に任命されたのだ。当時から、ハリスのような現地に通じたビジネスマンを国の代表にするのは珍しいことではなかった。(交渉にあたった江戸末期の日本人は、公人・軍人でない一商人を代表として送り込むアメリカという国に驚きの念を隠せなかっただろう)

建国時から、民間人の力はアメリカの経済力、政治力、軍事力の源泉である。

その点について、トランプから国防長官を指名され元軍司令官のマティスはこう説明する。「我が国の国家安全保障力はいつの時代も経済力と等価だ。そのことは、歴史を振り返れば、ローマ帝国でも大英帝国でも同じだ。ソ連でさえも財政規律が維持できないかぎり、軍事力は維持できなかった」

トランプはさらに突っ込んで、アメリカ本来の民の力、大統領のビジネス力の重要性について明らかにした(1月11日の記者会見)。

「大統領には(憲法上、ビジネスをしてはいけないという)利益相反条項はない。それは昔からそうだったのだ。私は実際、大統領として、偉大なわが社を経営しながら、同時に政府を運営できるのだ。しかし、彼ら(私を支持する国民)が些細なことで(君たちメディアと)もめてほしくないというから、やらないだけだ」

トランプが力説するように、アメリカには大統領職の人間がビジネスをすることを縛る法律はない。民間で活躍した人間がその実績をいかし、兼職で公的サービスに奉仕しながら、また本業ビジネスに戻っていくライフスタイルは、アメリカの成功者の証である。すでにトランプは、「大統領職を終えた8年後(注:2期やることを当然視した発言)、会社に戻る」(1月11日記者会見)と宣言している。

トランプはさらに娘のイヴァンカ、その夫ジャレッド・クシュナーを要職につけた。実業家出身者からしてみれば、信頼できる家族を大統領周辺のポジションにつけることも珍しいことではない。その制約が厳しくなった(「反縁故法」)のは、ケネディ大統領が弟のロバートを要職である法務長官につけたときからである。アメリカ史からみれば、最近の出来事である。