【連載】トランプの自由貿易論【4】トランプにとってTPPとは何だったのか


トランプにとってTPPとは何だったのか

読者からこんな質問が寄せられた。

「トランプが公正的自由貿易派なのはわかった。であれば、なぜTPPから離脱するのですか」

もっともな質問だ。そもそもTPPは、日本のような消極派を含め、環太平洋の国々で自由貿易を積極的に推進する役割を果たすはずだった。日本が参加したのも、オバマ政権が消極的だった日本にすすめた経緯がある。

そのTPPを「オバマ・トレード(オバマの貿易政策)」と呼び、それは「不公正」「アメリカ史上最悪の貿易協定」「災難になる」と警告してきたのがトランプである。

あらためて【連載】トランプの自由貿易論【1】日本のどこが「不公正」なのか の図をみてほしい。

オバマ民主党政権は、積極的派と消極派の間に位置付けられている。トランプに言わせば、オバマ大統領やクリントン国務長官(当時)は両者をつなぐ「間抜けな交渉役」(トランプ)の役割を果たしてきたのだ。

この発言でトランプが本質的に問題視しているのは、民主党政権の通商協定や外交スタンスが相手国の立場に立ちすぎていることにある。

その延長線上に、トランプはグローバルな「腐敗」「共謀」があるとして、非難する。本来、アメリカ国民のためにある交渉事が他国やグローバル企業、アメリカや他国の政治家や官僚、ロビイスト、政治家に大口献金した大企業を利すために行われているのではないか———という主張である。

この民主党の根本的な矛盾を有権者にわかる表現で、痛烈に突いていきたのが、トランプの選挙期間中のTPPに関する一連の「不公正」発言である。

TPP交渉を日本側から取材してきた筆者からみても、この主張にはうなずける。【連載1】で触れた「国家貿易」の細目をみてもわかる。TPP合意の輸入枠について、日米の特定の業界・団体を優遇する特約があからさまに組み込まれている。

自由化が難航すると思われていた保険分野でも、郵政とアフラックが交渉途中に突如、提携を発表するなど、「手打ち」といえる取引が行われた。

このような日本の国家貿易を司る農水省や政府色が濃い郵政によるTPPへの介入は、自由貿易の精神に反するものだ。日本の特定関係者を利するとともに、同じく、米国の関係者を利するものだからだ。

これでは、一般国民には何が起こるのかわからない。その現実についてトランプは単純化し、国民にこう説明してきた。

「協定は5600ページの長さだ。複雑すぎて、だれも読んでいない」(2015年11月10日、共和党予備選討論会)。

「TPPを修理する方法はない。われわれには2カ国間の貿易協定が必要だ。これ以上、われわれを縛り付ける国際協定は不要だ」(2016年6月28日、ペンシルバニア州での演説)

トランプの主張は新たな保護や優遇措置を求めているのではない。複数の利害関係者が集う多国間の「国際協定」が不透明さを生んでいることを批判しているのだ。

このように同じルールが全当事者に厳格適用なれないなら、「TPPは自由貿易協定ではない」「間抜けな協定」といっているだけだ。(2016年12月15日)