1週間後の大統領選挙はアメリカ、世界にとって「もっとも希望に満ちた」民主選挙である


読者からの質問

9月末にアメリカにプライベートで行ってきたのですが、これまで絶対それぞれ自分達が支持する民主党、共和党の候補を応援していた私の友人たちも今年は冷めていました。21世紀のアメリカは、私が留学していた40年前に想像していた明るいイメージから、どんどん離れていっている気がします。

浅川さんはどう思われますか。

回答

じつは私はまったく違う意見で、今回の大統領選はアメリカ、世界にとって「もっとも希望に満ちた選挙」だとみなしています

3つ根拠があります。

根拠①

共和党・民主党の予備選の投票数をみると、生まれてはじめて投票した人がいちばん多い選挙であること。オバマのときよりずっと多いです。これは、トランプの言葉と説得術によってはじめて、無党派層やサイレントマジョリティに届いたおかげです(なぜ届いたかは、拙著『ドナルド・トランプ 黒の説得術』をお読みください)。本選でも同様の結果になるでしょう。つまり、アメリカで民主主義が機能しはじめる記念すべき希望に満ちた選挙なのです。

根拠②

しかも、生まれてはじめて投票した層は、地方のミドルクラス、アッパーミドル層がメインです。アメリカの地域社会、経済を支える主要な納税層でもあります。さらにいえば、その層のなかでも中年から高齢者層が多い。逆にいえば、彼らの声がこれまで政治に反映されていなかったのです。

つまり、今回、その声がワシントンDCに届き、政治が有権者目線に変わるきっかけになる希望に満ちた選挙なのです。

その層は、メディアでは現状に不満をもつホワイト・プアなどと表現されていますが、投票者調査を厳密にみていくと、まったく的外れです。

根拠③

そして、大統領選の二人の候補者について、表も裏もほぼすべてが明らかになる記念すべき選挙です。

アメリカの民主主義とは、私の定義では、4年に一度、2つの欠陥商品(=大統領選の2人の立候補者)からどちらを買うか強制的に決めなければならないショッピングのようなものです。その欠陥商品が決める政策が、アメリカ人の全所得の3割(税金)について、その使途を決めるほどの重みをもっています。

商品(候補者)の欠陥性について、今回の大統領選ほど、さまざまな角度から評価、検討された選挙はありません。中傷合戦とよく評されますが、これも的違いです。政治家の欠陥についての評価基準が定まる過程にある、民主主義にとって希望に満ちた選挙です。

民間ビジネスなら商品・サービスの事前評価は当然のことですが、ようやく「政治ビジネス=所得の3割を決める」において、購入を決める前に一般国民が吟味できる状況ができてきた記念すべき選挙なのです。

これは、ソーシャルメディアの発達もありますが、「ウィキリークス」が果たした役割が大きいです。主要メディアが片方の候補者(クリントン)を一方的に応援する言論状況(=ビジネスでいえば、偏ったマーケット独占状態)に対して、機密暴露サイト・ウィキリークスが市場参入したわけです。

そのおかげで、繰り返しになりますが、商品の欠陥性について、政治家のイメージではなく、商品の製造プロセス(たとえば政治家:クリントンのメールのやりとり)まで透明化が実現しつつあるわけです。

以上の意味で、ご質問にあった、

絶対それぞれ自分達が支持する民主党、共和党の候補を応援していた私の友人たちも今年は冷めてました。

の理由はよく察することができます。

ご友人は、おそらくアメリカ全体でみれば、アッパー層のいわゆるエリートの方々で、もともと支持政党が明確で、投票率も高い層です。

現地取材してみて、今回の選挙でいちばん混乱、当惑、もっといえば絶望していたのはこの層のみなさんです。

彼らはもちろん良識的な方々で自分では意識できていませんが、これまでの選挙という政治ビジネスにおいて寡占化の勢力であったのです。

別の見方をすれば、これまで政治家はこの層が理解できる言語と政策を訴え、それをメディアが伝え、結果が決めっていたのです。

それが今回、トランプの登場によって、この少数派層の理解を超え、これまで伝達を独占していたメディアをもすっ飛ばし、直接もっと広い層(ミドルクラスとアッパーミドル)の心を動かす選挙になっているのです。

つまり、彼らは自分たちが国をリードしてきたと思い込んでいたけれど、じつは少数派であったことにはじめて気づきはじめていて、その状況が今後、永続化することに無意識的に恐怖を感じるか、少なくとも頭が混乱している状況といえるでしょう。

 

まとめ

いずれにせよ、世界の民主主義に発展において、アメリカがその先導役であるとすれば、その大統領選において、サイレントマジョリティが自分たちの運命を自分たちが決めるという期待をもって政治参加する今回の選挙が、いかに希望に満ちた(生まれてはじめて投票するのです!)ものか、想像いただけるかとおもいます。

 

※本記事は、2016年11月1日に私のFBに投稿されたコメントに対する返答を転載したものです。