米国史のなかのトランプ政権 ④トランプはアイゼンハワーを超えた!


④トランプはアイゼンハワーを超えた!

こうしたビジネス界・軍界の精鋭が集う政権といえば、アメリカ戦後史においては、トランプ政権は1950年代のドワイト・アイゼンハワー(第34代大統領)政権が思い浮かぶ。

アイゼンハワーはアメリカを代表する企業経営者を要職にすえた。たとえば、財務長官に鉄鋼メーカー社長ジョージ・ハンフリー、国防長官には自動車大手GM社長チャールズ・E・ウィルソン、保健教育福祉長官に写真大手イーストマン・コダック社の財務責任者バイヤード・フォルソムを指名した。政権二期目の国防大臣に就いたのは、「ブランド・マネジメント」創始者にして、P&G社長ニール・マッケロイであった。

そうしたビジネス成功者のチームをまとめたのが、軍界出身者であった。その代表が、自身が「ヨーロッパ連合国軍最高司令官」など輝かしい軍歴を誇る大統領アイゼンハワーだ。若干39歳で副大統領となったリチャード・ニクソン(37代大統領)は第2次大戦で活躍し、従軍中、「海軍きってのポーカーの達人」として名を馳せ、政界に進出した人物だ。退役軍人出身者はニクソンのほか、ダグラス・マッケイ内務長官、シンクレア・ウィークス商務長官、ウィリアム・ロジャース司法長官などがいる。「退役軍人が政府の要職を占めるのは、初代ジョージ・ワシントン大統領からアイゼンハワー大統領までのアメリカの偉大な伝統だ」(ワシントンポスト紙)

トランプ自身、アイゼンハワーに心酔していることを公言している。「共和党が民主党から政権奪回するには、アイゼンハワーを連れてくるしかない」(ドナルド・トランプ『Think Like a Champion』)

安全保障面でもアイゼンハワーとトランプ政権の類似点がある。メキシコからの不法移民対策だ。アイゼンハワー政権は、メキシコ政府とも協力し、退去プログラムを組み、政権1年目だけで100万人以上を送還した。トランプはこの計画を成功例として自著で取り上げ、同じように「移民システムをコントロールできる包括的なプログラム」が必要だとし、メキシコと交渉することを公約にしている。

インフラ投資を重視する政策もアイゼンハワーと同じだ。

自由企業体制を信奉するアイゼンハワーは、経済人こそ国内リーダーにふさわしいと考えた。一方、軍人として複雑な国際関係をみてきたアイゼンハワーは外交だけは民間人にまかせなかった。国務長官には、ダレス(日米安保の〝生みの親″)やハーターなど、政治・外交のプロを据え置いた。

その点、トランプは国務長官にエクソンCEОのティラーソンを指名するなど、外交においてもビジネスの成功者に絶対的な信頼をおいている。

大統領就任前からはじまった雇用創出

肝心の雇用創出についてはどうか。

就任前からトランプ流の実績が積みあがっている。これまでの政治家と違い、トランプが民間の力を信奉する大統領だと察知すると、世界中の企業経営者がトランプタワーに馳せ参じたのだ。日本からはソフトバンクの孫正義社長、中国からは馬雲(ジャック・マー)アリババ会長、ドイツ化学大手バイエルのベルナー・バウマンCEOなどだ。各企業の分野でアメリカでの何千、何万人もの新規雇用を約束している。

就任前から雇用増が約束されているぐらいだから、大統領になって、公約の経済・税制・エネルギー改革等を実行すれば、どうなるか。その近未来を予想し、織り込んでいるのが、当選直後からつづくアメリカの株高だ。