今回の大統領選は、オバマ革命「継続か」「阻止か」の選択選挙である【2】


オバマは2008年の大統領選で、「アメリカを根本的に変容させる」ことを訴えて当選しましたが、まさに変容させることに成功したわけです。

本当は投票したくないけれど、自分たちの生き方を守るために追い込まれているのです。ポリシーに反するけれど、トランプに消極的に投票することで、オバマ革命の継続阻止の確率を少しでもあげられれば・・・。

まさに「苦渋の選択」です。

現地取材でみた「苦渋の選択」の象徴例が、近代生活を否定するアーミッシュ派(自給自足だから全員農家)の人たちです。かれらはすべてトランプ支持。政府の農場、教育、生活介入=信仰介入を積極的に進めたいわゆる進歩派革命政権のオバマに完全に追い詰められている。

普段は投票しない(宗教上、地上の権威に関与しない)が今回は、クリントンになれば介入強化が4年続くのは耐え難い。そこで、自分たちの自治的な農業・生活・信仰を守るためにやむをえずトランプ投票にむけて運動を展開中なのです。

とくに大票田(選挙人が多い)のペンシルバニア州にアーミッシュ派が多いから、彼らの投票率が高ければ、全体のトランプ勝利の確率が高まる。ほとんどが生まれてはじめて投票だから、トランプ票が純増するわけです(彼らはスマホどころか、電話やパソコンもなく、世論調査など受けないから数値にでてこない)。

数十万人のアーミッシュなど少数派と思われるでしょうが、もっと大きな有権者層アメリカの全農家の立場と同じです。農家から大統領選をみるとマスコミと全く違う世界がみえてきます。

農家のトランプ支持73%、クリントン支持10%(ファームフューチャーズ誌農家世論調査)。別調査(ファームジャーナル誌)でも同様の結果(トランプ74%クリントン9%)。両誌ともアメリカを代表する農業メディアだ。

最新の農家世論調査「アグリパルス」(200エーカー=80ha以上の農場のみ対象)では、トランプ支持55%、クリントン支持18%。農家女性でもトランプ支持が多数派。(ちなみに、アグリパルスは大統領選2週間前に、毎回、農家の規模別や年代別の詳細投票意向とその理由や背景としての農業経済分析をきっちりだしてくる信頼できる調査です。

調査内容については、アメリカ開拓、建国時代から独立自尊の農家は共和党支持が大多数派だから、当然の結果といえます。農場経営の自立に対して、政府が介入していく民主党支持農家は、あとからやってきた少数のアジア系・ヒスパニック系・少数の黒人系小規模農家が中心。地域によっては商売的に民主党支持をしておかないと問題が起こるので、消極的支持派もなかにはいる。

そんな彼らをいちばん動かしたのは、じつは、自分たちの文化や価値観擁護といった自己利益でさえありません。オバマ・ヒラリー革命の腐敗です。

公平実現の美辞麗句と表裏一体なのが腐敗です。何が公平で、そのためにだれを優遇するか判断する人が、無数の人が参加するマーケットではなく、一部の特権階級が独占的に決められる。そして、その特権階級が固定化する。

新興貴族階級の登場です。その象徴的な存在がクリントン家とクリントン財団であり、アラブ産油国やイランからの貢物が献金トップリストに入っている。その金でクリントンから献金で買収されたサンダースや職を得たFBI関係者(猟官)です。この腐敗の構造を権力で強化していたオバマ自身はつかまりたくないから、当然、クリントンを擁護しています。

オバマ、クリントンに代表される新興貴族は民主党を支持する一般労働者や公務員、新興アッパークラスの人にとって憧れの的、アイドルですから、何があってもアイドルに投票する。(オバマは海外経験と腐敗と美辞麗句の街「シカゴ」で頭角を現した都会型政治家だから、クリントン家のように田舎から苦労して這い上がってきた大根役者とちがって、立ち振る舞い・言葉遣いふくめアイドル維持能力が高い・・・)

ところが、独立自尊の人たちはそんなくだらないアイドルには一瞥もくれない。メシを稼げず、他人の金に寄生してえばっているやつらは唾棄すべき存在であって、一切の関わりをもちたくなかった。

そんな彼らを今回動かしたのは、目にあまる腐敗を彼らの目前にあぶりだした、トランプの説得術のなかでも「誇張法」なわけです。

彼らが表現できなかった感情をトランプが言葉にしてくれたのではなく、放っておいた腐敗を看過できない細部までクローズアップして、トランプがみせてくれたわけです。

みてしまった以上、(遠くにみえていた腐敗が、トランプ話法の「遠近等価作用」で、近くでの出来事にみえてきた結果)「近所で問題があれば俺が解決するしかない」という彼らの男気・女気を触発したといってもいいでしょう。

近所、台所、子供・・・まで差し迫った、「オバマ革命を継続するか?」「阻止するか?」の選択選挙なのです。

・・・と以上(すべて)、語ってきたようなビジュアル的な構図に今回の大統領選を位置づけ、訴求し(アピール)、価値観を揺さぶり(エンゲージメント)、絶対に選挙に行かなかった独立自尊の人々を家から引きずり出せる(エンパワメント)のは、トランプ以外にいなかっただけです。

トランプが勝利した場合、当然、嵐や分断とみえるような事象をいま以上にメディアが取り上げるでしょうが、土着のアメリカ文化(開拓・独立精神)が再び花開く(Make America Great Again!)ことだけは間違いありません。

日本でも腐敗した武士の時代から、庶民の自主独立を説いた福沢諭吉は、長年、明治維新後、政府の憲兵に長年、監視されていました。困った人がいないと困るのが政府であり、困った人が精神的に自立する自由主義は過激思想なわけです。分断をあおるのは、そのほうが得する人がいるからです・・・明治政府は勲章授与で懐柔しようとしたが、福沢はそれも拒否した。自らメディアになって戦ったわけです。

その意味で、トランプの過激にみえる発言やツイッターは、現代アメリカの「学問のすすめ」なのです。