【連載】トランプの自由貿易論【6】トランプの「為替の自由貿易」論(2)


トランプの「為替の自由貿易」論(2)

前回、TPPのような自由貿易協定に「為替」の自由化、逆にいえば、為替の政府介入の規制・禁止条項を入れようというのがトランプの主張であることがわかった。

これは何もトランプ独自の考えではない。じつは、TPP交渉において、アメリカ側の主張で為替条項が提起されたものの、日本などの反対で協定に採用されず、断念した経緯がある。

その経緯が発表されたのと同じ月(2015年12月)に「TPPでは日本の為替操作を止められない」とツイートしている。つまり、トランプはTPPの交渉推移をじっとウオッチしていた様子がうかがえる。

それまで演説等で「TPP再交渉」論をほのめかしたこともあったが、トランプはこの時期以降、「TPP離脱」論に急傾斜していった。為替条項が導入されないことをたしかめ、TPPを完全に見限ったのだ。トランプにとって、「為替の自由貿易」ルールを定めない協定など自由貿易ではないからだ。

このツイートには続きがある。

「そして、TPPに中国は裏口から入ってくる。それは止めなければならない」

この主張は、大統領選の予備選討論会1回(2015年8月6日)から一貫している。裏口とはどういう意味か。

TPPは中国やロシアをはじめ、現状の12カ国だけでなく、APEC(アジア太平洋経済協力)全加盟国(21カ国)に参加資格がある。トランプは、いずれ中国はTPPに参加してくるとみていた。とくに協定に為替条項がないことを確認した後で、こっそり加盟申請してくる、という意味だ。

条項がなければ、中国はTPPのその他のメリットは享受したまま、「為替操作(元切り下げ)」をやりたい放題だからだ。TPPでその抑制や禁止する手段を定めなければ、アメリカはこれまでどおり、中国に対してなすすべがない。

実際、協定の大筋妥結後、「中国共産党機関紙、中国もTPPに参加せよと主張」(2015年10月25日、ロイター)といった報道が聞こえてくるようになった。(2016年12月20日)