【連載】トランプの自由貿易論【5】トランプの「為替の自由貿易」論(1)


トランプの「為替の自由貿易」論(1)

「私は自由貿易を全面支持する。しかし、自由貿易は公平でなければならない」(2015年10月18日)

そう発言してきたトランプがTPPを不公平とみなした理由は、国際(多国間)協定が「グローバルな腐敗」体質を生むという持論がゆえ、だけではない。離脱すべき理由として、繰り返してきたもう一つの持論に日本や中国の「為替操作」説がある。

たとえば、2015年12月27日のツイッターでこうつぶやいている。

「TPPは日本の為替操作を止められない」

選挙討論会でも同様の発言をしている。

「日本がやっていることは信じられない。通貨を切り下げている。(中略)TPPは切り下げを考慮していない」(2016年3月3日、共和党予備選討論会)

「他国がたえずやっている通貨を切り下げは、われわれに対してとてもうまくやっている」(2016年3月10日、共和党予備選討論会)

そのうえで、こう結論づけている。

「私だけがそれ(外国の通貨切り下げによる不公平な競争状態)をどうやって変えるか知っている。壇上のほかの誰も私がやるような変え方を知らない」(同前)

日本の金融政策が為替操作に相当するかどうかの議論は別として、自由貿易と為替管理に何の関係があるのか。

ここで自由貿易、そして為替管理とは何か。簡単な定義をしておこう。

自由貿易「国家が商品の輸出入についてなんらの制限や保護を加えない貿易。輸入税・輸入制限・為替管理・国内生産者への補助金・ダンピング関税などのない状態→ 保護貿易・管理貿易」(大辞林)

為替管理「国際収支の均衡と為替相場の安定を目的として,政府または政府の代理機関を通じて為替取引に直接的な規制を加えること」(ブリタニカ国際大百科事典)

両者の関係は多いにある。自由貿易(Free Trade)とはそもそも、輸入税や輸入制限がないだけでなく、「為替管理がない状態」のことを指している。モノの貿易(Trade)だけでなく、為替の貿易(Trade)も同列に定義されている。仮に関税がなくなっても、為替への政府介入や規制が残るのであれば、それは自由貿易ではないのだ。

前回、とりあげた上の一連の「為替操作」発言でトランプが問題提起しているのは、TPPが自由貿易協定であるならば、「為替の自由貿易」についてもきちんと公正なルールを定めるべきだということだ。

公正的自由貿易者であるトランプとして、正論である。いくら協定で関税が下がっていっても、相手国の通貨切り下げを認めたままでは、関税を自由にかけているのと同じ状態で輸出はしづらい。相手国からの輸入はしやすくなる。「だから、我が国の企業が国内にいて競争するのはとても困難だ」(2016年3月10日、共和党予備選討論会)というのがトランプの主張だ。(2016年12月16日)