【連載】トランプの自由貿易論【2】日米交渉の結果はどうなるか


日米交渉の結果はどうなるか

前回の連載で、トランプが〝公正的自由貿易派”であることがわかっただろうか。つまり、トランプがTPP離脱を表明したからといって、即「保護主義」と解釈するのは短絡的すぎる。同時に、長年、自由貿易に消極的だった日本が突如、アメリカより積極的になったような認識やそれを広める見解や報道はまったくの幻想である。

トランプが主張する2カ国交渉がはじまるとどうなるか。出発点はTPPでの合意事項である。交渉では当然、日本は現状、TPP参加国のなかで最低の自由化比率を米国と同等にまで高めるよう求められる。それが、公正的自由貿易派トランプの交渉ポリシーである。

つまり、両国間の自由貿易がいまよりすすみ、まちがいなく、日本の国民の大多数は利益をえる。

そこに至るまで問題になるのはトランプでもなければ、TPPでもない。日本の保護主義のほうである。自由化しないと長年、断固主張してきた例外品目数があまりに多すぎるのだ。その政治的ツケがいまごろ回ってきただけである。

下記の表をみていただきたい。TPP12カ国の農産物品目の関税撤廃スケジュールを示している。いちばん右が関税の非撤廃品目比率を示している。19%と日本は他国を圧倒している。

米国も非撤廃比率を1.2%残すなか、いちばん保護主義的なはずの社会主義国ベトナムでさえ0.6%まで削減している。

それどころか、日本はもっとも社会主義的で反自由貿易的な取引システム「国家貿易」を残している唯一の先進国である。コメや小麦、不足するバターをはじめ国家貿易品目が多数ある。自由貿易どころか、いまだに国家(農水省)が貿易量を制限、コントールしているのだ。

「今後の2カ国FTAにしても、関税の低減・撤廃、貿易量の制限禁止が目的である。それを目指す当事国で、自由化が良いか悪いかの是非を問う次元の議論が行われているのは日本しかない」浅川芳裕『TPPで日本は世界一の農業大国になる』2012年)のだ。

繰り返すが、これはTPPや2カ国交渉、ましてやトランプの問題ではない。

問題は、日本の政治家は大多数の国民の声に耳を傾けず、こうした関税非撤廃・国家貿易品目を「聖域」(安倍首相)として守ることを「国益」と説明してきたことにある。

真相はといえば、既得業界・官庁の利益を「聖域」として扱ってきただけだ。実態は少数の業界人・団体職員や関係官庁の公務員などノイジー・マイノリティ(声高な少数派)である。彼らにとって「政治=個人の利益」となるため投票率は高く、政治家からみれば確実な「票田」になる。問題は、選挙を通じて、そうした少数の声を優先してきた日本政治の結果なのだ。まさに「少数による専制」(Tyranny of the minority)である。

多数の国民、とくにサイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)の圧倒的な支持で当選したトランプとそうした少数の既得権益をバックにした日本政治家が直接対決すれば、どんな交渉になるのか。勝つのがどちらか、もう答えるまでもない。

しかし、一般国民は何も心配することはない。日本が交渉に負ければ負けるほど、自由貿易がすすみ、得をするからだ。

もうそうなら、マスコミで日々流れているトランプへの恐怖心を煽る報道はいったい何なのか。アメリカ国民の圧倒的な支持を背景にしたトランプの言葉に日本の政治家や官僚が慌てふためいている———その表層的な現象を映し出している鏡にすぎない。(2016年12月6日)