【あとがき】全文公開!『悲観論の嘘をぶっ飛ばす 日本よ!《農業大国》となって世界を牽引せよ』

日本よ!≪農業大国≫となって世界を牽引せよ

官僚に奪われた―――日本農業の3つの自由

【あとがき】
本稿執筆現在、TPP(環太平洋パートナーシップ)の妥結が迫っている。しかし、日本政府は相変わらず、コメの輸入枠を増やすという禁じ手で交渉相手国の譲歩を最後まで求めている。自由貿易を否定する暴挙であり、国家同士の管理貿易強化に帰結する。

これは、米国にとっては自由競争をせずとも、日本への輸出枠を確保し、自国の農業界に対するメリット提供を意味する。対する日本政府にとってはコメの輸入量を人工的に増やすにもかかわらず、「聖域を守った!」と喧伝できる口実となる。あたかも国際交渉に勝利したという幻想=国内政治的ポーズを農業界に対して示すことだけに意味があるのだ。

つまり、国内に農業・農村票をかかえる日米の政治家同士の手打ちである。しかし、その結末は、日本の消費者の負担増のみならず、国内穀物生産の減産政策を助長し、残念ながら、飼料米の促進などより補助金に依存する農業政策に直結する。このシナリオの勝者は、輸入権益、補助金予算を自動的に強化、増大できる日本の農水官僚である。

増田悦左先生の言葉を借りれば、「国家エリートが自分の存在理由を証明できるチャンス」が訪れるというわけだ。

農産物貿易に限らず、本書のテーマは多岐にわたった。対談を終え、全体に通底する思想は何だったのか考えてみた。換言すれば、「自由意思の底力」についての本である。あらためて増田先生の言葉を借りれば、「独占を嫌うニッポン庶民の知恵」であり、それは「統制的なエリート主義」とは無縁の世界である。

意欲のある日本の農業者が求めている世界も同じだ。国の保護政策や補助金政策でもなければ、まして、国がコメの輸入量をコントロールする統制経済でもない。むしろ、政府による農業市場への介入低減である。そうした将来像が明確になれば、新たな国内外の市場環境に備え、透明な農業経営の判断を行うことができる。その結果、国の政策に依存しない日本農業を創出させる契機となる。簡単にいえば、農業者が自由意思で思いっきり農業ができる“土壌”にすればいいだけだ。

しかし、現実の日本農業には3つの自由が略奪されている。「政府の指示なく作る自由」「誰でも農業をする自由」「関税なしで買う自由」だ。すべては官僚機構によって統制されているのだ。

統制によって、農業者の経営力が奪われるばかりか、食費の高騰をはじめ国民生活逼迫の元凶にもなっている。そんな中、我々はどのような未来像を描き、現実に対処すればいいのか。増田先生が歴史、経済の原理をひもとき、私が農業、食の現場を語る形で、指針を示すべく本書はつくられた。  収斂した結論は「無策こそ最上である」「庶民の知恵に委ねよ」―――。

本書がこれからも続く略奪された自由を奪還する戦いにおいて、一助になれば幸いである。


増田悦佐 浅川芳裕 『悲観論の嘘をぶっ飛ばす 日本よ!《農業大国》となって世界を牽引せよ』(2015)ヒカルランド

【あとがき】(2015年8月2日執筆)より転載