「(トランプ氏)TPPで豹変も…商務長官候補に知日派ロス氏 ジャーナリスト浅川氏『他国とは条件闘争』」に関する追加解説


 

「(トランプ氏)TPPで豹変も…商務長官候補に知日派ロス氏 ジャーナリスト浅川氏『他国とは条件闘争』」

本記事は、筆者のコメントにもとづき記事が構成されているが、タイトルにある「豹変」とも「条件闘争」とも発言しておらず、また内容も私の見解を厳密にあらわしていないので、追加解説しておく。

 

解説

・トランプの立場は首尾一貫して、イクオールフィッティング(取引条件の同一化)を重視する自由貿易派である。彼の演説や公約集をみていればわかる。

・そもそも、共和党の自由主義志向の通商政策をフリーライドしてきたのが、労働組合保護の歴代民主党政権。NAFTA、TPPにしても共和党政権が主導したが、政権交代後、NAFTAはビル・クリントンが、TPPはオバマが自分の手柄、功績にしようとした。

・その民主党の根本的な矛盾を有権者にわかる表現で、痛烈に突いていきたのが、トランプの選挙期間中の通商政策に関する一連の発言であり、公約である。

・トランプが本質的に問題視しているのは、民主党政権の通商協定や外交スタンスが「相手国の立場に立ちすぎている(その延長線上に、グローバルな癒着、腐敗を含む縁故主義がある)」こと。

・トランプの真意は、そんな歪んだ現状を改め、国益にたちかえることに尽きる。そこで通商協定では、自国民のためにイクオールフィッティングな(トランプ表現※では有権者にわかりやすい「フェアな」な(自由)貿易協定に改める、である。

・その点、いちばん「アン・フェア」(保護主義)にみえるのが、中国、メキシコにつづき、残念ながら日本だ。

・TPPで決まった各国の自由化比率を比較すれば、一目瞭然である。全品目で、米国とその他がほぼ100%に対して日本だけ95%(全加盟国で最低)、その原因となっている農産品目で他国はほぼ100%に対し日本だけ81%(ダントツ最低)。

・その日本の自由化比率は、保護主義といわれる中国よりずっと低い(例:97%、中ニュージーランドFTAの場合)。

・記事の後半に私の発言として、撤退表明はトランプの「条件闘争」とあるが、正確ではない。トランプは闘争など一切せずとも、日本はすでに譲歩(農産物の自由化)せざるをえない立場に追い詰められている。

・反対にTPPで「条件闘争」してきたのは、日本だ。「農産物をこれ以上、自由化させると、地方・農村票が自民党から離れるから、政権が持たなくなる。そうなれば、日本は交渉から撤退せざるを得ない。それでもいいのか」という、戦後一貫した、内向きの「脅し」国際交渉テクニックであり、この手法がオバマ政権下のTPP交渉ではなんとか通用した(そういう多国間交渉のどさくさにまぎれた不正を認めない、といっているのがトランプ)。一方、日本は国会向けには、農産物(5品目)は「聖域」といってきた。

・しかし、イクオールフィッティング(取引条件の同一化)を重視する自由貿易交渉では、その手は通じない。

・その(=農産物の自由貿易「聖域」化=保護主義)ツケが今回、回ってきただけだ。

・だから、筆者は、農産物の自由化比率をTPPで中国基準(最低97%)まで早くあげることを2011年主張してきた。

・そもそも、農村・国会対策で「聖域化=農業を守る」というフレーミングで、TPP交渉を乗り越えようとしてきた政治の失敗

・筆者は逆に、「自由貿易=農業・食産業・消費者3方にとっていいこと」という理論と実践で「日本は世界5位の農業大国」「TPPで日本は世界一の農業大国になる」を書き、政権は一部、農業の成長戦略と称してその内容をとりこんだ。

・小手先の農業改革をしても、もともとの自由化比率を高めないかぎり、農業の発展につながらないし、自由貿易交渉は乗り切れない。

 

私の見解:

・先の選挙マーケティング上の差別化ポジショニング戦略と加えて、トランプは勝利後を見通した、通商相手国との交渉上レバレッジを最大化を実現できる最適解が「NAFTA再交渉」と「TPP撤退表明」公約である。

・つまり、トランプは日米FTAから、TPP再交渉、中国主導のRCEP、米中通商交渉まで、どれでも選択もできる、もっとも取引の自由度が高いポジションを築いている。

・その結果、現状、TPP参加・不参加にかかわらず、日中のような「アン・フェア」な保護主義国に対して、一網打尽の交渉(レバレッジが効いた)ができる。

・トランプがもっとも重要視する通商政策の成果指標は、中国との貿易不均衡の解消だ(その原因はトランプによれば、「為替管理」、「国内補助金」)。その意味では、「米中通商交渉」(関税をはじめとする通常の通商分野だけでなく、「為替管理」、「国内補助金」まで交渉テーマになる。)

・私がトランプ・アドバイザーなら、米中交渉を優先する。ただし、まずは難易度の低い、関税交渉だけを優先し、アジア諸国の自由化比率の基準点を上げる(中国はアメリカの穀物が必要だから、日本より早い)。そうすれば、自動的に日本は農産物の関税の自由化度を最低、中国基準まであげないといけなくなる。日本以外の保護貿易国も同様。つまり、日本やその他の国との面倒な交渉が不要になる。

・安倍総理がトランプ次期大統領を訪問しようがしまいが関係ない。

・「農産物の聖域化」(保護主義)と決別し、「自由貿易(農産物の自由化)=国民(農業・食産業・消費者3方にとっていいこと)」という新たなフレーム(国民への説得手法)をつくりあげるとき。